米国科学誌「Aging (Albany NY)」に、老年病態研究チーム(心血管老化再生医学研究)の板倉陽子研究員、佐々木紀彦研究員、豊田雅士研究副部長は「細胞内と細胞膜における糖タンパク質の質的および量的な変化が細胞老化と個体老化の均衡を維持している」について発表しました。
Qualitative and quantitative alterations in intracellular and membrane glycoproteins maintain the balance between cellular senescence and human aging.
「細胞内と細胞膜における糖タンパク質の質的および量的な変化が細胞老化と個体老化の均衡を維持している」
Itakura Y, Sasaki N, Toyoda M(板倉陽子、佐々木紀彦、豊田雅士)
「Aging (Albany NY)」2018年8月号に掲載(2018年8月29日電子版に発表)
Aging (Albany NY), 10(8): 2190-2208, 2018.
https://doi.org/10.18632/aging.101540
本論文は、細胞の内部に存在するタンパク質に結合した糖鎖*の種類を調べ、細胞の老化および個体の老化(加齢)でどのように変化しているかをレクチンマイクロアレイ法**を用いて解析しました。またタンパク質はその機能に応じて細胞膜や細胞内に配置されます。そこで、タンパク質上の糖鎖が細胞内部および細胞膜上にどのような割合で存在し、さらに老化過程でどのように変化するかを解析しました。
その結果、以下のことが明らかとなりました。
これらのことは、細胞の内部では糖鎖変化は小さく糖鎖の種類は一定に保たれていますが、細胞の老化とともにシアル酸は細胞内部に蓄積されていく可能性があることを示唆しています。また、細胞老化と同様に加齢によっても細胞全体におけるシアル酸などの糖鎖の組み合わせは変化し、細胞老化に見られた糖鎖の割合の変化が加齢にも反映されていることが示唆されました。
今後、細胞老化における糖鎖変化が示す機能的な役割を解明することで、糖鎖をターゲットとした加齢に伴う細胞機能低下の抑制につながることが期待されます。
*糖鎖:https://www.tmghig.jp/research/topics/201602/
**レクチンマイクロアレイ法:糖鎖を認識して結合するタンパク質(レクチン)を複数種固定したスライドガラス上で、蛍光標識した試料(ここでは細胞由来の糖タンパク質)を反応させ、シグナルとして検出する手法。