東京都健康長寿医療センター長
許 俊鋭
当センターでは、「患者さん、ご家族に喜んでいただける医療」を目指して心血管病(生活習慣病)、がん医療、認知症、救急医療に全力で取り組んでいます。この4つの柱を重点医療とし、更に高齢者に多発する骨関節疾患、 肺疾患、目、鼻、皮膚などの感覚器疾患などの疾患に対しても十分な医療ができる体制を構築しています。190万人の人口を有する東京の区西北部二次医療圏の地域医療のモデルを作ると同時に、私たちの病院には高齢者に最先端の医療をどこまで実施できるのか、実施するために超えるべき壁は何か、実施した結果何が得られるのか、といった高齢者に特化した問題解決のための高度専門医療を担う病院としての役割も負っています。高齢者に優しい低侵襲先端医療を可能な限り取り入れて、高齢者の「健康で幸せな」未来を拓いていくことにも注力していきます。
研究所では、老化そのものの機序や高齢者に多い認知症、フレイル(虚弱)、サルコぺニアなどの疾患の機序の解明、更に早期診断・治療および予防に関する研究とともに、「私たちが良かれと思って実施してきたことが本当に良かったことなのか」「患者さんおよびご家族が在宅で高齢者を診ていくことに満足されているのか、ご家族とともに幸せを享受されているのか」などのさまざまなデータを集めて、次世代の高齢者医療につながる研究も展開しています。こうした研究の中から高齢社会において、地域全体で高齢者を診ていくシステムをどうのように作っていくのが良いかを考えていく、日本の高齢者社会を担う専門病院・研究所でもあります。
今後さらに高齢化が進みます。センターは単なる高機能な病院、研究所に終わることなく、研究所と病院が協力し、地域に住む高齢者の健康増進をどう図るかを考え、高齢者に多い『日常生活動作』(ADL)の低下、認知症など高齢者の『生活の質』(QOL)を低くする老年症候群の予防、治療、ケアまでを一貫して行うセンターを目指します。また、こうした活動を通じて全ての職員が日々の診療活動や研究活動に喜びと生きがいを感じる職場となるようセンターを構築していきたいと考えています。
明治5年に設立され、これまで145年に亘りわが国の高齢者の福祉、医療に重要な役割を果たした養育院の歴史を踏まえつつ、東京都健康長寿医療センターはこれからの高齢社会の問題を発掘し、先行的にその解決を図る高齢者のリーディングホスピタル・研究所であり続けたいと決意しています。