折々の記(その4)
グルメ 前編
旅行のおり、一番の楽しみは朝食である。洒落た日本食ではなく、ざっけないバイキングが良い。二日酔いにはまず味噌汁が必須である。ネギとワカメは多めに入れ、二杯はいただく。ニコニコノリと納豆、半熟卵は欠かせない。小鉢に納豆をあけ、半熟卵(山芋もあれば)一緒にいれ、たっぷりの醤油でかき混ぜる。熱々のご飯にかけ、ハグハグとかき込むようにいただくのが作法である。
時に、塩鮭、ソーセージ、キューちゃん刻み、たくあん、タラコなどを、納豆ご飯の消費と歩調を合わせ、計画的に食べていくのが戦略である。
ゆめ、先にご飯が終わってしまわないように気をつけたい。素人はご飯のおかわりなどして、戦術の失敗を糊塗しているが、恥ずかしい。こんな朝食の食生活は、
今はない。大抵は、トースト、ヨーグルト、コーヒーである。
1950年代の我が家が7人家内で、小さなちゃぶ台を囲んで朝食を競って食べた。薪をくべて竈で炊いたご飯は美味しかった。
おかずは、飼っていた鶏の卵、たくあん、塩辛い魚、野菜たっぷりの味噌汁であった。ノリは高価で盆暮のみ。納豆は父母が嫌いで、東京に来てから「こんな美味しいものが世の中にあったのか」とそれまでの年月は慚愧に堪えない。
グルメとは、好きなものを好きな方法で夢中で食べることと思っている。