断片化(その2)
「医療の断片化」
以前の大学はナンバー内科、ナンバー外科と言って、一つの内科に循環器、呼吸器、消化器、内分泌代謝、腎臓、血液、膠原病、神経などなんでも揃っていた。カンファレンス(症例検討会)は持ち回りなので、専門グループ外の臨床症状、所見、検査、治療、予後など豊富に経験できた。今では、初期研修後の内科専門医獲得までの数年間に「経験症例」と「試験」で知識を身につけることになっているが、到底、珍しい症例などの経験は少ない。
専門グループは、今では専門科として、教授を筆頭に専門領域を掘り下げ、研究も行うこととなる。地域の病院に就職しても多くは専門科単位であり、「内科」の知識は専門外かどうかを判定する尺度になっているのが悲しい。
このような「診療科の断片化」は、複数診療科の受診となり、地域では複数医療機関の受診となる。勢い、各医療機関からの薬剤の増加は避けられない。
多投薬をポリファーマシーと呼ぶが、6剤以上が国際基準である。本邦では40%以上の受診者がポリファーマシーであることから、医療の断片化の程度もわかる。ポリファーマシーを改善するための2剤以上の減薬に保険点数がついたのは、画期的であるが、本質的な解決ではない。何より、受診者本人の視点に立った医療政策が必要である。これにはシステムとコーディネーターの両者が必須で、システムのキーワードとして高齢者では「フレイル」によって集約が可能である。コーディネーターとしては、地域のかかりつけ医師、看護師、薬剤師、栄養士がフレイルの知識とケアプランを立てられる教育をへて、受診者の減薬、それに代わる非薬物療法、日常生活ケアプランを立てられる社会が根本的な解決につながる。
東京都健康長寿医療センターのフレイル予防センターでは、フレイルサポート医、サポート看護師、サポート栄養士の育成を数年前から開始している。全国的なシステムに成長することを祈っている。