社会参加と地域保健研究チーム

チームリーダー

研究部長 小林 江里香

研究紹介

 社会参加とヘルシーエイジング研究チームは、多様な高齢者が、社会とのつながりや役割をもつことで、人生を楽しみ、持続可能な地域づくりに貢献できる社会の実現を目指し、社会参加・社会貢献とそれを支えるヘルシーエイジング(フレイル・認知症の一次予防)の推進、および社会関係の構築に資する研究を行います。

  高齢者を主な研究対象としますが、高齢者のニーズや課題が時代とともに変化していることに着目し、高齢期以前の人も対象に含めることで、次世代の高齢者のライフスタイルにあった社会参加のあり方や、次世代支援・世代間関係に関する研究にも取り組んでいます。

 当チームは以下の3つのテーマグループによって構成されます。

 社会参加・社会貢献研究テーマでは、人生100年時代における高齢者の社会参加と社会貢献の在り方を提示することを目指し、社会的活躍の促進と早期認知機能低下の抑制を軸に研究を展開しています。本格的な超高齢社会の到来に伴い、ミドル・シニア世代には地域共生社会の中核を担うことが大いに期待されています。また、多様性を尊重する現代社会では、健康づくりや社会との関わり方についても個々人の意思が重視されます。旧来の学習・労働・引退から成る3ステージモデル型のライフコースにとらわれることなく、健康状態と個人の志向によって社会との関わり方が変化し続けるという新しい価値観のもと、個々人が社会の中で活躍するための具体的な方略とそれに付随する健康への影響について検討を進めています。

 ヘルシーエイジング研究テーマでは、ヘルシー・エイジングを推進する社会システムの構築に向けた研究を、フレイル・認知症の一次予防の観点から取り組んでいます。テーマが保有する複数の長期縦断コホートを研究基盤としたフレイル予防の三本柱である「運動・栄養・社会参加」に着目した疫学研究は、これまでに老年学、公衆衛生学の発展に資する数多くの成果を生み出してきました。疫学研究だけでなく、社会実装研究にも注力しており、自治体と協働したフレイル予防のための社会システムの開発と実装化、シルバー人材センター、介護施設等と協働した高齢者就労における新たな機会創出に向けた研究にも取り組んでいます。加えて、すべての人がヘルシーエイジングを達成できるような社会を実現するには、健康づくりやフレイル予防に関心があり、活動に積極的に参加できる層を対象にしているだけでは不十分です。ヘルシーエイジングの裾野をより広げ、健康格差を縮小させるため、行動経済学の知見やテクノロジーを取り入れながら、健康づくりや社会参加に消極的な無関心層の意識変容、行動変容を促すためのアプローチ方法の開発も行っています。

 大都市社会関係基盤研究テーマでは、大都市の中高年者のニーズに合った社会的つながりの構築を目指し、経済・健康問題を含む複合的視点でのアプローチを行っています。主な研究課題は、高齢期に社会的孤立や生活困窮に陥るのを防ぐための中年期からの孤立予防、および、高齢者の健康維持や生きがいにつながる住民交流の場(通いの場)づくりを、自治体と住民が協働で進めるためのシステムの構築です。また、30年以上にわたり継続している全国高齢者パネル調査(JAHEAD/NSJE)に基づき、社会関係・社会参加やそれらの基盤となる家族・健康・経済状態等における加齢変化や世代的・時代的変化、地域差を明らかにするための基礎的研究にも取り組んでいます。

 このように、私たち3つのテーマグループでは、多様な専門領域の研究者が参加し、相互に協働・補完しながら、社会関係・社会参加やその効果を検証するための基礎的研究から、介入プログラムを社会実装するための応用研究まで幅広い研究に取り組んでいます。得られた研究成果は、共同研究を実施する自治体をはじめ、東京都や国の施策づくりに生かされます。

研究テーマ紹介

社会参加と社会貢献研究

1.社会貢献活動の実態と効用および次世代高齢者のライフスタイルに合わせた社会活動の探索に関する調査研究
2.社会参加の促進を目的とした多様な生涯学習プログラムの開発・検証と健康増進効果の機序解明に関する介入研究
3.多世代共生社会の構築に資する社会参加・社会貢献活動の実装と普及に関する実践的研究

ヘルシーエイジングと地域保健研究

1.縦断研究データ等を基に、フレイル・要介護化・認知症等の危険因子の解明
2.地域における効果的な介護予防対策の実施と評価
3.健康無関心や社会的弱者など、働きかけが難しい対象層へのアプローチ方法についての検討と提言

大都市高齢者基盤研究

1.中年期からの孤立予防
2.PDCAサイクルに沿った多様な通いの場の推進と評価
3.高齢期の健康・生活の縦断的変化と時代・地域差