研究部長 藤原 佳典
わたしたちの研究チームは、わが国の高齢者人口の8 割を占める生活機能の自立した"高齢者を主な対象とし、ICFモデルに示された「参加」、「活動」の増進に向けた研究および地域でアクションリサーチを行い、健康日本21(第二次)で掲げられている「健康寿命(余命)の延伸」と「健康格差の縮小」に寄与することを目的としています。チームは、3つのテーマグループに分かれて、プロダクティビティの増進とヘルシー・エイジングの推進、更には、社会とのつながりの中で抱える課題の解明に寄与する研究を進めています。
プロダクティビティとは、就労、ボランティア、近隣や友人との助け合い、家事など、有償・無償の生産的で社会的な役割を担う活動全般をさします。ヘルシー・エイジングとは、身体的、精神的及び社会的な機能を保ちながら自立した生活を送ることをさします。
日本が直面している人口減少・少子・超高齢社会では、高齢者のプロダクティビティに大きな期待が寄せられています。多様な社会参加・社会貢献プログラムによりソーシャルキャピタル(社会関係資本)を醸成する研究を行う他、多世代で支え合う重層的な地域システムを構築し、プロダクティビティの促進と「健康格差の縮小」に貢献します。
ヘルシー・エイジングを推進するためには、フレイル(=虚弱)に着目した介入研究と総合的な疫学研究を行います。そして、その成果を生かしてヘルシーエイジングを実現するための個人的アプローチの手法と社会システムを開発し、それを全国に普及することで「健康余命のさらなる延伸」をめざします。
社会とのつながりの中で抱える課題を解明するためには、地域住民の大規模調査データの収集や分析を行います。こうした大規模調査は、主に高齢期のワーク・ライフ・バランス推進のための課題の明確化と世代間支援の実態と効果の解明に主眼を置きます。
私たち3つのテーマグループは相互に協働・補完しながら、政策に還元できる研究を進めています。大都市基盤研究テーマグループが把握・推測した社会参加・社会関係に関する知見を社会参加と社会貢献研究テーマグループやヘルシーエイジングと地域保健研究テーマグループが介入プログラムやアクションリサーチにより実証および実装する連携体制をとっています。例えば、自治体の介護予防・日常生活支援総合事業においては、フレイル予防や多世代互助の視点を入れたモデルのSPDCAサイクル[Survey(調査)→計画(Plan)→実施(Do)→評価(Check)→見直し(Act)]を支援しています。
得られた研究成果は、共同研究を実施する自治体をはじめ、東京都や国の施策づくりに生かされます。更には、2030年に向けて国連が掲げる持続可能な開発目標SDG's(Sustainable Development Goals)の17項目のうち9項目の達成に寄与できるものと考えます。
【SDG'sの17項目】
1. プロダクティブエイジングの促進に資する各種プログラム・システム開発
(a)就労支援に資する研究
(b)ボランティア・生涯学習促進に資する研究
(c)多世代共生に資する研究
2. 社会参加が健康に影響を与える心身社会的機序の解明と新たな健康度の評価手法の開発