私達はこれまで、高齢者に対するフレイル予防の普及啓発を目標に、地域での取り組みを勧めてきました。
フレイル予防では、
1 .レジスタンス運動(スクワットやダンベル運動など、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動)や
ウォーキングなどの習慣的運動実践によって体力を保持すること
2 .たんぱく質をはじめとした多様な食品を摂取して十分な栄養素を確保すること
3.社会参加を通じて人や社会と結びつくこと
この、運動(体力)・栄養・社会参加の3本柱が重要です。これらの実践は継続することが大切ですが、高齢になると段々と気力・体力が衰えやすくなり、その結果、活動範囲も狭まりがちになる中、個人の力のみで実現するのは難しくなってきます。そのため、個人の取り組みを社会全体で支援していくことが不可欠として、地域ぐるみのフレイル予防の実践を推進してきました。
これまでの地域での活動は、対面での講座や教室を主体としていました。地域では高齢者の集いの場などで、運動や趣味の講座や教室、サロンなどが定期的に開催されており、その地域の方は各々好みのものに参加することができます。私達は、フレイル予防の普及啓発活動として、その取り組みにフレイル予防の運動・栄養・社会参加のエッセンスを追加していき、普段の活動の中でフレイルを予防できる環境を目指してきました。しかし、2020 年3月ごろより感染症対策のため、地域での多人数での集会は中止、集いの場は臨時休館となりました。2020 年7月現在でも、地域によっては活動の自粛が続いています。このことを含めた外出の自粛の影響により、運動・栄養・社会参加の頻度の減少による身体・認知機能の低下が懸念されます。
私達はこれらの懸念を払拭するために、感染症対策期間中でも、フレイル予防活動を推進するためのコンテンツを開発しました。
今回開発したのは、コミュニケーションアプリLINEのトークルームで利用できる2つのアプリケーション、「運動カウンター」と「食べポン」です。
運動カウンターは、筋力運動や口腔体操、ストレッチなど計8種類の運動の実践を記録するためのアプリです。運動の説明動画の視聴もできます。さらに詳しい運動の方法については、YouTubeでのLIVE配信「ゆるっとスマホ体操」にて連携して紹介もしました。
「食べポン」は、「肉類、魚介類、卵類、牛乳類、大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、果物、芋類および油脂類」の10種類の食品の1日の摂取回数を記録するためのアプリです。これまでの普及啓発活動での食・栄養面においては、上記の10の食品群のうち、1 日で7 食品群以上を摂取することを推奨してきました。この10の食品群は、日本の栄養指導でも用いられている「三色食品群」や「六つの基礎食品」に基づいているため、高齢者に限らず、どの世代の方にとっても、意識していただくことでバランスの良い栄養素摂取に繋がります。
どちらのアプリも、ただ記録するだけではなく、インターネット上での他者とのつながりを感じられるように工夫をしました。次項では、それぞれのアプリについてご紹介します。
また、本稿で紹介するコンテンツを含む運動啓発やフレイル予防のためのコンテンツが、ヘルシーエイジングと地域保健研究チームの成果発表ホームページに集約されています。ぜひご覧になってください。
ヘルシーエイジングと地域保健研究チーム
https://www.healthy-aging.tokyo
運動カウンターは、運動の動画配信およびユーザの実践数記録/結果表示を行うためのアプリです。運動カウンターで利用できる運動は、筋力運動5種類「つまさきあげ」「かかとあげ」「ももあげ」「ひざのばし」「スクワット」、腰痛予防のためのストレッチ「こしひねり」、口腔体操「あーんー体操」、ウォーキングの計8項目になります。運動カウンターのインタフェースを図1に示します。
8種類の運動項目は、画面下部にメニューボタンとして表示されており、各メニューを押すと、そのメニューの運動動画がユーザのトークルームに送信されます。それとともに、実践回数を問うボタンが表示され、ユーザはそのボタンに自身が実践した回数を入力することで、運動回数を記録することができます。運動回数の記録をすると、結果を表示する「日別集計」「月別集計」、実践日数に応じて花が咲く「花咲かミッション」、友人同士のランキングが表示される「フレンドミッション」などのボタンが表示されます。
また、運動カウンターのメニューを中心とした、YouTubeLIVE での運動の紹介チャンネル「ゆるっとスマホ体操」を開設し、合計5回の配信をしました。そして、ゆるっとスマホ体操にてより詳しい運動内容を学べること、そのURL などを、運動カウンター内でメッセージとして通知しました。
運動カウンターは、2020年4月1日にプロジェクトHP にて公開し、2022年1月4日の時点で4940人の登録者がいます。
ゆるっとスマホ体操ホームページ
https://sites.google.com/view/prism-kenko/live
運動カウンター
https://www.healthy-aging.tokyo/exercise-counter
図1
食べポンは、ご飯やパンなどの主食を除いて、主菜と副菜を構成する「肉類、魚介類、卵類、牛乳類、大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、果物、芋類および油脂類」の10 種類の食品の摂取回数を記録するアプリです。このアプリの元となった食品摂取多様性得点(DVS)では設問肢の形で、「1週間にほぼ毎日食べる」食品群を問うものですが、食べポンでは、これを利用しやすいように、1日のうちにほんの少量でも口にしたら1点で、1日7点を目標に食べることを推奨しています。食べポンのインタフェースを図2に示します。
食べポンでは、画面下部のメニューボタンにある食品群のアイコンを押すことで、その食品群に1点が加算されます。また、これまでの結果を表示する機能、利用者同士で得点を競争する機能があります。食べポンは2020年4月1日にプロジェクトHP にて公開し、2020年7月27日の時点で571人の登録者がいます。
食べポン
図2