眼科 部長 善本 三和子(よしもと みわこ)
"目の手術!" と聞くと、「何か見えるの?」「怖くないの?」と思っていませんか?「白内障で見えにくいけれど、目の手術が怖くて先延ばしにしていた」という方は少なくありません。視覚は"五感"の一つ、目はとても敏感な体の部位ですが、通常の白内障手術は、医学的には局所麻酔、つまり"患者さんは意識があり会話できる状態" で受けていただける手術の一つです。その理由は、強い痛みを伴うことがほとんどない(全身麻酔で意識をなくす必要があるほどの強い痛みが起こらない)からです。とはいっても、「痛いんじゃないかな?」という不安はどなたでもあると思います。そんな不安が少しでも和らぐように、患者さんからよくいただく質問に対する答えと、手術後の患者さんからお聞きした感想を添えて、手術の様子を"患者さん目線" でお伝えします。
☆「私はあまり知らないほうがよい」、という方は、どうぞ読み飛ばしてください。外来でお渡しする"白内障手術について"(2025年より新しくなりました!)を読み、主治医の説明を聞いていただくことで、今までも多くの方に安心して手術を受けていただいております。
手術前は、病室でお休みいただきながら、瞳を開く目薬を複数回つけて準備し、手術の時間になったら、
病棟看護師が車椅子で手術室にご案内します。(日帰り入院の方も、術後は病室でお休みいただいてから、
お帰りいただけますのでご安心ください。)
手術室の入り口で、名前の確認後に、麻酔の目薬をつけ(しみます)、車椅子で部屋に入り、①手術用の椅子に座ります。②背もたれが倒れ仰向けになります。目の消毒後に、③目の部分だけ穴があいた紙布が顔の上にかかり、まぶたを開く器具をつけます。(手術中には勝手に目は閉じませんので、ご安心ください。(p.3「手術室にて:その2」図参照))その後顕微鏡(光)が顔の上に近づくと、最初はとくにまぶしく感じます。
手術が始まると、顕微鏡の光は見えますが、手術器具がはっきり見えることはありません。少し目を押される感じ(圧迫感)はありますが、通常は強い痛みはありません。目の周りの皮膚には麻酔しないので、瞼(まぶた)を触る感じはわかります。主治医が声を掛けながら、手術を進めますので、体の力を抜いて、リラックスしていてください。
とはいっても、痛みの感じ方には個人差があり、「痛いんじゃないかな?」と不安に思うほど痛く感じるものですので、そんなときは、遠慮なく、申し出てください。(麻酔薬を追加します。)また咳がでそうなときも我慢せず、声を出して教えてください。
白内障(水晶体)は、直径約10mm、中央の厚みが約4mm程度の紡錘形の小さな部位です。現在広く行われている、小切開白内障手術は、小さな傷口から、水晶体の中身だけを取り出す高度な技術が必要で、顕微鏡を使って手術を行います。
白内障は加齢とともに進みます。見えにくいのを我慢して、手術は怖そうだから、という理由だけで先延ばしにしすぎると、白内障が進み、手術が難しくなる(手術時間が長くかかる、視力の回復に時間がかかる、手術の合併症が多くなるなど)ことがあります。また手術後の目薬や清潔に関する自己管理も必要です。見えにくいと感じたら、まずは近くの眼科を受診し、手術が必要な白内障*と診断されたら、むやみに手術を怖がらずに、適切な時期に白内障手術を受けましょう。
最後に、手術に対する不安には痛みだけが理由ではなく、治療全般が苦手な方、閉所恐怖症の方など様々な事情があります。ご自分が苦手なこと(気分不快になる、じっと静止できない状況など)は、初診時に主治医にお伝えください。
*手術が必要な白内障とは:白内障による見えにくさのために日常生活に不自由がある場合が手術の対象です。手術は早ければ早いほどよいということではありませんが、手術の適応や適切な時期は患者さんにより様々ですので、主治医とよくご相談ください。
血管病センター 血管外科 専門部長 松倉 満(まつくら みつる)
"人は血管と共に老いる"この有名な格言が表すように、動脈硬化の進行に伴い発症する血管病は全ての方が罹患する疾患であり、加齢と共に急激に症状が顕在化します。血管病は根治という概念がありませんので、生涯にわたる適切なフォローアップが肝要です。専門医による適正な診療を受けて、生活習慣の改善と薬物療法に努めることが治療の基本となります。ただし大動脈瘤や末梢動脈疾患は手術治療が必要となる場合も多く、大動脈瘤切除や下肢バイパス術等の観血的手術、もしくはステントグラフト内挿術や血管内治療が施行されます。
血管外科では大動脈瘤や下肢動脈に対する難易度の高い手術を日常的に行っていますが、低侵襲とされる血管内治療であっても治療を行った血管は肥厚して変性するため、動脈が閉塞して複数回手術が必要となる可能性があります。下肢バイパス術後の場合、移植したグラフトが閉塞もしくは感染して初回治療から10年以上経過して再手術を要することも稀ではありません。一般に再手術は初回手術と比較して、格段に難易度が上がります。観血的手術では炎症で癒着した血管の剥離に伴う大量出血のリスクがあり、予期せぬトラブルが頻繁に起こります。最適な治療計画を立案することは勿論ですが、治療を完遂するために臨機応変な術中判断と技術力が求められます。このような高度の専門性が求められる血管病の再治療は、経験豊富な専門医が在籍する血管外科が最も適した診療科となります。実際に当科でも病歴の長い方に対する再治療件数が増加しており、外科的バイパス術を受けて5 年以上経過したバイパスグラフトの閉塞例、大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けて20 年以上経過して仮性瘤を形成した症例、ステントグラフト治療後遠隔期の瘤拡大例など、多種多様な症例を経験しています。当科で再治療を行った症例を供覧します。患者さんは20 年以上前に他院で腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けた方です。人工血管置換部に一致して大動脈瘤形成しており、胸部下行大動脈にも60mm を超える大動脈瘤を認めました(図1)。
図1
高齢であり手術を受けるか悩まれていましたが、瘤破裂のリスクが高い状態であり再治療に踏み切ることを選択されました。胸部・腹部大動脈の同時手術となりますが、術前画像を詳細に検討して胸部・腹部共にステントグラフト内挿術が可能と判断しました。本症例では胸部ステントグラフト留置に使用するシースが約9mm と太く、術前画像で人工血管左脚が動脈瘤により圧排されていたことから、開腹して人工血管左脚からシース挿入し手技施行しました( 図2 下記画像)。
図2
術後経過は良好で術後15 病日に退院されました。治療が順調に終了したことでご本人も安堵され、ご家族より感謝の手紙を頂いております。
昨年度より定期的なフォローアップを受けていない方に対する緊急手術が増えており、専門医として現状に危機感を持っております。血管病センターの中核を担う、血管外科の新たな試みとして、他院で手術加療を受けて定期的な診察を受けていない方を対象に、" 血管フォローアップ外来"を開設する予定です。本外来は完全予約制で火・木曜日午後に各日1 名限定で診療します。遠方で相談希望の方はオンライン対応しますので、該当の方がおられましたら周知お願い致します。
上記に関連して血管病で悩まれている方、診療科の選択を迷われている方は、血管病センター宛にご紹介頂ければ適切な診療科をご案内します。
東京都区西北部の基幹施設として適正な血管診療を実現するために尽力します。
信頼できる医療機関として、血管病センターをご活用頂きますようお願い致します。
クリティカルケア特定認定看護師 特定集中治療室主任看護師 石川 峻
例えば、幅広い知識で患者さんとご家族を支える「専門看護師:CNS」、特定の分野に深くかかわる「認定看護師:CN」。また、医師と協力して一部の医療行為を行う「特定看護師」や、医師と一緒に診療に参加する「診療看護師:NP」もいます。
これからの連載では、それぞれの看護師がどのような役割を担っているのかをご紹介していきます。
今回は、集中治療室で働く私の役割についてご紹介します。
私は「クリティカルケア特定認定看護師」として、重い病気で治療を受けている患者さんをサポートしています。人工呼吸器を使っている方の呼吸の調整を行うことや、言葉で気持ちを伝えられない患者さんの表情や脈拍、血圧、呼吸の変化から「苦しくないか」「不安がないか」といった思いをくみ取り、少しでも安心して過ごせるようにケアしています。
また、院内全体では「呼吸のケア」や「重症化の予防」にも取り組んでいます。血管が見えにくい方には超音波(エコー)を使い、安全に採血や点滴を行うこともあります。
これからも、専門的な知識や技術を生かしながら、一人ひとりに寄り添ったあたたかい看護を大切にしていきたいと思っています。