介護・エンドオブライフ研究

メンバー

リーダー 研究部長 井藤 佳恵
研究員 菊地 和則、池内 朋子
非常勤研究員 小野 真由子

キーワード

エンドオブライフ、意思決定、認知症ケア、職種間連携、ソーシャルワーク、ケアマネジメント、主観的時間意識

主な研究

  1. エンドオブライフに関する意思表明支援の方法の開発
  2. 介護施設職員を対象とした看取りケアの経験学習促進プログラムの開発
  3. 認知症高齢者の行方不明に関する研究
  4. 認知症症状を軽減するためのケアアプローチに関する研究
  5. 加齢に伴う主観的時間展望・時間意識の変化に関する研究

研究紹介

介護・エンドオブライフ研究は、介護が必要になり徐々に衰えていく過程にある高齢者とその家族、ケア提供者に焦点を当てた研究を行っています。

1.エンドオブライフにおける意思決定支援
 日本の高齢者は介護が必要になっても家族に遠慮して自らの意思を明確に示さないことがあります。そこでご本人の意思決定を支援するための「ライフデザインノート」を開発しました。自らの過去や現在の生き方を振り返って整理し、終末期を含めた将来の生活の希望を書き残すことにより、終末期を迎えた時に「どのような最期の生活を過ごしたいか」という本人の希望に沿ったケアが提供できるのではないかと考えています。今後は、代理決定する可能性のある家族の思いについての研究も進めていきたいと考えています。

2.終末期ケア
 高齢者介護施設に入居されている方への終末期ケアは、関わっている人によって最適なケアのあり方が異なるため、一律に座学やマニュアルで学ぶには限界があります。そこで、終末期ケアの経験を概念化し、次の実践に生かすことを目的とした「反照的習熟プログラム」を開発し、施設で試験的に導入していただいています。その結果、内省から概念化への過程が促進され、ケア遂行への自信が高まる可能性が示唆されました。集合教育での活用も視野に入れ、分析を進めています。

3.認知症高齢者の行方不明に関する研究
 警察庁の統計によると、平成30年の認知症による行方不明者は16,927人であり、年々増加の一途を辿っています。行方不明は最悪、死亡という重大な結果をもたらすにも関わらず、日本だけでなく世界的に見ても研究は少ない状態にあります。認知症高齢者が暮らしやすく、安心して外出できるまち作りを進めていくため、また家族の介護負担を軽減するため、認知症高齢者の行方不明に関する研究を行っています。

4.専門職後見人によるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関する研究
 弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職後見人は、医療への同意権が無いことからACPに関わることは無いという誤解があります。しかし、民法の規定により被後見人の意思を尊重する義務があり、被後見人のACPに取り組んでいる専門職後見人もいます。今後、独居認知症高齢者が増加していく中で、専門職後見人の役割は益々重要になっていくと考えられます。そのため、専門職後見人が行うACPの実態と促進要因を明らかにするための研究を開始しました。

5.加齢に伴う主観的時間展望・時間意識の変化に関する研究
 加齢に伴い変化する未来時間展望の知覚は、目的意識的行動と関連するといわれています。生涯発達の適応的調整に着目した社会情動的選択性理論と未来時間展望の知覚を活用し、終末期の意思表明において、個々人が理想とする結末に向けた行動を促すことができないか検討しています。また、地域在住高齢者を対象とした我々の研究では、暦年齢が高くなるほど主観年齢は低くなる、すなわち、多くの人は高齢になるほど気持ちが若返っていることが示されました。身体機能や社会機能が低下しても、若いと感じる要因を解明し、高齢者が最期までwell-beingを維持しながら過ごすための支援について研究を行っています。

6.老年期のアイデンティティ再構築の支援の検討
 平均寿命の延伸に伴い長期化する老年期において、さまざまな喪失体験や環境への変化に適応し、誰もが自分らしい最期を迎えるために、アイデンティティの再構築およびライフステージに応じた人生の再設計を支援することが必要であると考えます。アイデンティティは生涯において発達するという考え方の下、適応的なアイデンティティを再構築することにより、ポジティブなアウトカムを増大させることが可能になるといわれます。高齢者のアイデンティティの再構築は自伝的記憶の再構成を行うことにより促されるという仮説を基に、老年期の人生の再設計の支援方策について検討を行っています。

介護・エンドオブライフ研究では、研究成果を広く普及し活用して頂けるように、
ホームページから報告書、各種資料をダウンロードできるようにしています。是非、ご活用下さい。
独居認知症高齢者の行方不明に対する市町村の取り組みに関する研究 報告書
看取りの振り返りを有効に実施するためのガイド
引用文献リスト
看取りケア確認シート
看取りケア確認シートフェイスシート
検討会フィードバック

終末期ケアは、あたかも必要な医療やケアを行わず、死を早めることと誤解している人もいます。人生の最期は誰にも必ず訪れます。最期を考えることは、今この時を大切に生きたいと思えることにつながると私たちは考え、研究を継続しています。

主要文献

  1. 島田千穂,粟田主一,菊地和則,池内朋子,他,令和2年度老人保健事業推進費
    等補助金 長期療養施設におけるBPSD緩和のための非薬物療法・対応の実態把握
    と介入事例の前向き調査結果報告書,東京都健康長寿医療センター研究所,1-
    149,2021.
  2. Ikeuchi, T., Taniguchi, Y., Abe, T., Seino, S., Shimada, C., Kitamura, A., & Shinkai, S. (2021). Association between Experience of Pet Ownership and Psychological Health among Socially Isolated and Non-Isolated Older Adults. Animals, 2021; 11(3):595. https://doi.org/10.3390/ani11030595
  3. 菊地和則、大口達也、池内朋子、粟田主一、独居認知症高齢者の行方不明の実態:150事例からの報告、老年精神医学雑誌(in press)
  4. Maekawa, K., Ikeuchi, T., Shinkai, S., Hirano, H., Ryu, M., Tamaki, K., Yatani, H., Kuboki, T., Kusatsu ISLE Study Working Group Collaborators. Number of functional teeth more strongly predicts all-cause mortality than number of present teeth in Japanese older adults, Geriatr Gerontol Int, 2020; 20(6):607-614 [Epub ahead of print]
  5. 島田千穂、菊地和則、伊東美緒、平山亮、他:認知症の行動・心理症状緩和のための非薬物療法の効果に関する研究事業結果報告書(令和元年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業),東京都健康長寿医療センター研究所,2020.3
  6. 菊地和則,安藤千晶,唐戸直樹,篠田浩,他,高齢者虐待の実態把握のための調査研究事業報告書,厚生労働省,1-226,2020.
  7. 島田千穂,粟田主一,菊地和則,平山亮,他,令和元年度老人保健事業推進費等補助金 認知症の行動・心理症状緩和のための非薬物療法の効果に関する研究事業結果報告書,東京都健康長寿医療センター研究所,1-117,2020.
  8. Edahiro A, Miyamae F, Taga T, Sugiyama M, Kikuchi K, Okamura T, Awata S : Incidence and distribution of subtypes of early-onset dementia in Japan: A nationwide analysis based on annual performance reports of the Medical Centers for Dementia, Geriatr Gerontol Int 20(11):1050-1055, 2020. https://doi.org/10.1111/ggi.14043
  9. 井藤佳恵:精神疾患と身体合併症を有する患者の治療上の意思決定に関する課題.精神科治療学2020; 35(3):265-271
  10. 井藤佳恵:精神科長期入院患者の終末期医療.Legato 2020;(6)2:93-97
  11. 木村亜希子、井藤佳恵:精神保健福祉法における同意者の同意能力について.心と社会2020;51(3):36-43
  12. 井藤佳恵:精神科病院における身体合併症を有する認知症患者のケア.老年精神医学雑誌2020; 31(10):1082-1087
  13. 井藤佳恵:地域における困難事例―再犯を繰り返す高齢者.認知症の最新医療2020;10(4): 194-196
  14. 井藤佳恵:認知症高齢者の身体合併症医療に関わる自己決定支援をめぐる課題.生存科学2020;31(1): 155-159
  15. 私たちの医療倫理が試されるとき―自己決定・自己責任論を超えて―(齋藤正彦・井藤佳恵編).ワールドプランニング,東京(2020)
  16. Niikawa H, Kawano Y, Yamanaka K, Okamura T, Inagaki H. Ito K, Awata S:Reliability and validity of the Japanese version of a self-report (DEMQOL) and carer-proxy (DEMQOL-PROXY) measure of health-related quality of life in people with dementia. Geriatr Gerontol Int 2019, 19(6): 487-491
  17. Kikuchi, K., Ijuin, M., Awata, S., Suzuki T., Exploratory research on outcomes for individuals missing through dementia wandering in Japan, Geriatr Gerontol Int 19(9): 902-906, 2019.
  18. 島田千穂、原沢優子、樋口京子、中里和弘、伊東美緒:特別養護老人ホームの看取りケア協働的内省セッションの評価に関する探索的研究.日本エンドオブライフケア学会誌,2019; 3(1):15-22
  19. 菊地和則,市町村の権利擁護課題に対する体制整備状況調査報告,実践成年後見83,52-61,2019,民事法研究会
  20. 菊地和則,島田千穂,平山亮,その他,平成30年度老人保健事業推進費等補助金 高齢者の権利擁護における基礎自治体での相談体制・事例対応の実態把握等に関する調査研究事業報告書,東京都健康長寿医療センター研究所,1-191.2019.
  21. 井藤佳恵:地域における困難事例:意思決定に関わる倫理的課題.生存科学2019;30(1):201-107
  22. 井藤佳恵:認知症高齢者医療の現場における成年後見制度利用の現状(2)(地域の事例).老年精神医学雑誌2019; 30(1):64-67
  23. 井藤佳恵、木村亜希子:レビー小体型認知症に関わる医療・介護制度.( 山田正仁監修、小野賢二郎編集)レビー小体型認知症診療ハンドブック.86-95.フジメディカル出版,大阪(2019)
  24. 菊地和則,森寛子,防災へつなげる枠組み-東京都での調査研究,(東京都健康長寿医療センター編)復興をみつめて-東京都健康長寿医療センター東日本大震災被災者支援プロジェクト5年半の取り組み,192-222.2018.東京法規出版.(査読なし)
  25. 湯原悦子,滝沢香,川端伸子,菊地和則,他、高齢者虐待における重篤事案等にかかる個別事例についての調査研究事業報告書、認知症介護研究・研修仙台センター,1-215,2018.
  26. 岩佐一,吉田祐子,稲垣宏樹,増井幸恵,島田裕之,菊地和則,大塚理加,野中久美子,吉田裕人,鈴木隆雄、地域高齢者における新たな生活機能指標の開発:JST版活動能力指標の測定不変性ならびに標準値、厚生の指標、65(15)、1-7、2018.
  27. 菅亜希子、伊東美緒、黒川由紀子、宮本典子、坪山栄:認知症の人と介護する配偶者を対象としたライフストーリープロジェクト-ポジティブな効果が得られたケースレポート-、認知症ケア事例ジャーナル、2018; 11(3):206-212
  28. Iwasa H,Masui Y,Inagaki,Yoshida Y,Shimada,Otsuka R,Kikuchi K,Nonaka K,Yoshida H,Yoshida H,Suzuki T: Assessing competence at a higher level among older adults: development of the Japan Science and Technology Agency Index of Competence (JST-IC), Aging Clin Exp Res. 2018 Apr;30(4):383-393. doi: 10.1007/s40520-017-0786-8.
  29. Haga T, Ito K, Sakashita K, Iguchi M, Ono M, Tatsumi K.: Risk factors for pneumonia in patients with schizophrenia. Neuropsychopharmacol Rep 2018; 38(4): 204-209
  30. Haga T, Ito K, Sakashita K, Iguchi M, Ono M, Tatsumi K.: Risk factors for death from Psychiatric hospital-acquired pneumonia. Intern Med 2018; 57(17): 2473-2478
  31. 井藤佳恵:認知症高齢者の終末期医療をめぐる意思決定支援:主体性の回復ということについて.生存科学2018; 29(1):85-90
  32. 井藤佳恵:精神科身体合併症医療における意思決定の支援.精神科2018; 32(2):155-159
  33. 井藤佳恵:成年後見制度の現状と課題: 認知症高齢者困難事例の成年後見制度利用を通じた考察.日本認知症学会誌2018; 32(2):234-241
  34. 井藤佳恵:認知症の人の終末期について考察する.認知症ケア事例ジャーナル2018; 11(1):29-34
  35. 井藤佳恵、杉山美香、粟田主一:「見守り支援事業」がハイリスク高齢者の精神的健康度の維持・向上に寄与する可能性―情緒的ソーシャルサポートを基盤とした支援―被支援関係の構築.(松下正明・齋藤正彦編)認知症医療・ケアのフロンティア.3-14.評論社、東京(2018)
  36. 井藤佳恵、杉山美香、粟田主一:認知症高齢者の精神的健康度の維持・向上に寄与する要因の検討.(松下正明・齋藤正彦編)認知症医療・ケアのフロンティア.15-27.評論社、東京(2018)