メンバー
リーダー |
研究部長 平野 浩彦
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研究員 |
本川 佳子、白部 麻樹、五味 達之祐 |
技術員 |
早川 美知、カランタル 玲奈、江口 佳奈 |
非常勤研究員 |
那須 郁夫、岩崎 正則、本橋 佳子、 五十嵐 憲太郎、小原 由紀、森下 志穂、松原 ちあき
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非常勤技術員 |
三上 友里江、西田 直美
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非常勤事務員 |
松永 瑞穂 |
連携大学院・研究生 |
細川 知隆(九州歯科大学) |
キーワード
オーラルフレイル 健康寿命 認知症 在宅療養 食欲 食行動関連障害 低栄養 食品摂取の多様性 食形態 口腔機能 地域包括ケア 通所介護
主な研究
1.高齢者の口腔および栄養評価法の確立
2.オーラルフレイルの普及啓発
3.高齢者の食環境整備
研究紹介
1.高齢者の口腔および栄養評価法の確立
地域在住高齢者から要介護高齢者までを対象として、口腔機能(歯周病を含む)および栄養評価指標を開発検証し、現場への普及を目指して研究を行っています。また、認知症の状況に応じた高齢者の継続的な口腔管理等の地域連携システム構築に向けた研究も進めています。
口腔機能の指標としては、新たにオーラルフレイルのチェック項目を開発しました(図1:オーラルフレイル内のチェック項目(OF-5))。オーラルフレイルは、8020運動に加えて、高齢期における口腔機能に焦点化した概念として検討が開始され2014年に基本的な概念が日本発で提唱されました。その後、多岐にわたるエビデンスに基づいた検討が行われて、2024年4月にステートメントが発出されました。オーラルフレイルは、口の機能の健常な状態(いわゆる『健口』)と『口の機能低下』との間にある状態です。歯の喪失や食べること、話すことに代表されるさまざまな機能の軽微な衰えが重複し、口の機能低下の危険性が増加しますが、改善も可能な状態と定義されています。
図1.オーラルフレイルの概念図
また、 介護現場で利用者の低栄養・口腔機能低下のリスクを早期に把握し栄養専門職・歯科専門職へつなぐ評価指標を作成しました(パンフレット2・3)。その効果検証として、通所系サービス事業所の利用者200名を対象に調査を行った結果、口腔・栄養に関する取り組みを行っている事業所の利用者の方が、歯科治療の必要性が少ないことを明らかにしました(図2)。
図2.通所系サービス事業所における口腔・栄養への取り組みの有無と歯科治療ニーズとの関わり
1.パンフレット「おいしく食べて 低栄養予防」
2.パンフレット「地域で支える!口腔管理・栄養ケア~通所事業所編~」
3.パンフレット「地域で支える!口腔管理・栄養ケア」
2. オーラルフレイルの普及啓発
多機関連携による大規模調査研究事業を複数実施し、得られたデータを基にオーラルフレイルの普及啓発を進めています。
新たに開発したオーラルフレイルのチェック項目(OF-5)を用いて、地域在住高齢者1,206名を対象に調査した結果、約3人に1人がオーラルフレイルに該当することが明らかとなりました。また、オーラルフレイルは、 多様性の低い食事および社会的孤立を介して間接的に身体的フレイルと関連することが分かりました(図3)。
図3.オーラルフレイルとフレイルとの関連
オーラルフレイルは改善可能な状態であることから、改善プログラムの作成および効果検証を無作為化比較対象試験にて実施し、有用性を明らかにしました(図4)。得られた知見は、日本だけでなく、国際歯科連盟(FDI)を介してアプリ開発やWebコンテンツなどで海外へ向けても発信し普及させています。
図4.3カ月介入によるオーラルフレイル・口腔機能の比較
3. 高齢者の食環境整備
高齢期の健康な食事は健康長寿の基盤であり、健康な食事を摂るためには、その入口である口が健康であることが必要です。当テーマでは、さらに、食・栄養の課題解決を含めたきめ細やかな対応について研究を行っています。
地域在住高齢者509名を対象に、咀嚼機能と栄養素および食品群別の摂取量との関連を検討し、咀嚼機能不良群は、多くの栄養素(たんぱく質、カルシウム、ビタミンなど)および食品群(いも類、緑黄色野菜、海藻類、豆類、魚介類、肉類など)において摂取量が有意に低いことを明らかにしました(図5)。
図5.咀嚼機能別の栄養素等・食品群別摂取量
主要文献(2023年度)
- Shirobe M, Edahiro A, Motokawa K, Morishita S, Ohara Y, Motohashi Y, Iwasaki M, Watanabe Y, Hirano H. Association between Dementia Severity and Oral Hygiene Management Issues in Older Adults with Alzheimer's Disease: A Cross-Sectional Study. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2023; 20(5):3841.
- Tanaka T, Hirano H, Ikebe K, Ueda T, Iwasaki M, Shirobe M, Minakuchi S, Akishita M, Arai H, Iijima K. Oral frailty five-item checklist to predict adverse health outcomes in community-dwelling older adults: A Kashiwa cohort study. Geriatr Gerontol Int. 2023 Sep;23(9):651-659.
- Masaharu Murakami , Hirohiko Hirano , Masanori Iwasaki , Maki Shirobe , Ayako Edahiro , Shuichi Obuchi , Hisashi Kawai , Yoshinori Fujiwara , Kazushige Ihara , Keiko Motokawa .Development of a multiple masticatory function model based on the evaluation of sarcopenia: A cross-sectional survey of the Otassha study. Arch Oral Biol. 2023 Nov:155:105803.
- 本川 佳子, 三上 友里江, 早川 美知, 白部 麻樹, 柄澤 紀, 長谷川 隆則, 河合 恒, 大渕 修一, 平野 浩彦.地域在住高齢者の肉類摂取量とフレイル関連因子に関する横断的検討.日本サルコペニア・フレイル学会雑誌(2433-1805)7巻1号 Page112-115(2023.06).
- 岩崎正則, 福原正代, 大田祐子, 藤澤律子, 角田聡子, 片岡正太, 茂山博代, 正木千尋, 安細敏弘, 細川隆司 日本人男性労働者における主食の重ね食べと歯周病の関連についての横断研究. 口腔衛生学会雑誌. 73 (1), 42-50, 2023.
- 本川佳子、須永将広、宮崎純一、徳丸季聡、石岡拓得、山邊志都子、宮島功、伴野広幸、阿部克幸、畠山桂吾、田口佳和、金井一人、石川史明、林衛、藤原太樹、鈴木克麻、原純也. 一般病院における管理栄養士の病棟配置体制が入院時の体重減少抑制に及ぼす影響. 日本臨床栄養学会雑誌 第44巻 第2号 2022. 85-89
- 芦田 かなえ, 藤谷 順子, 本川 佳子, 坪川 操, 西村 一弘, 藤原 恵子・高アミロース米粉を利用した粥ゼリーの物性調査.日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌(1343-8441)27巻1号 Page44-52.2023.04.
- 中村 育子, 前田 佳予子, 田中 弥生, 本川 佳子, 水島 美保, 前田 玲.終末期の在宅療養者に対する在宅訪問栄養食事指導の介入効果の検討日本在宅医療連合学会誌(2435-4007)4巻3号 Page19-27.2023.08.
- 森茂雄, 前田玲, 中村育子, 前田佳予子,田中弥生,本川佳子: 人生の最終段階を含めた高齢者に対する食支援の在り方についてー多職種に対する質問票による課題検討ー. 日本在宅栄養管理学会誌. In press
- Iwasaki M, Yoshihara A, Suwama K, Zaitsu T, Suzuki S, Ihira H, Sawada N, Aida J. A cross-sectional study of the association between periodontitis and physical activity in the Japanese population. Journal of Periodontal Research. 58(2), 350-359, 2023.
- NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). Diminishing benefits of urban living for children and adolescents' growth and development. Nature. 615, 874-883, 2023.
- Iwasaki M, Motokawa K, Shirobe M, Hayakawa M, Ohara Y, Motohashi Y, Edahiro A, Kawai H, Fujiwara Y, Sakata Y, Ihara K, Watanabe Y, Obuchi S, Hirano H. Serum levels of vitamin D and periodontal inflammation in community-dwelling older Japanese adults: The Otassha Study. Journal of Clinical Periodontology. 50(9), 1167-1175, 2023.
- NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). Global variation in diabetes diagnosis and prevalence based on fasting glucose and hemoglobin A1c. Nature Medicine. In press, 2023.
- Iwasaki M, Shirobe M, Motokawa K,Hayakawa M, Miura K, Kalantar L, Edahiro A, Kawai H, Fujiwara Y, Ihara K, Watanabe Y, Obuchi S, Hirano H. Validation of self-reported articulatory oral motor skill against objectively measured repetitive articulatory rate in community-dwelling older Japanese adults: The Otassha Study. Geriatrics & Gerontology International. 23(10), 729-735, 2023.
- Iwasaki M, Inoue M, Usui M, Ariyoshi W, Nakashima K, Nagai-Yoshioka Y, Nishihara T. The association between trypsin-like protease activity in the oral cavity and kidney function in Japanese workers. Journal of Clinical Periodontology. 2024 Mar;51(3):265-273.
- Iwasaki M, Shirobe M, Motokawa K, Tanaka T, Ikebe K, Ueda T, Minakuchi S, Akishita M, Arai H, Iijima K, Sasai H, Obuchi S, Hirano H. Prevalence of oral frailty and its association with dietary variety, social engagement, and physical frailty: Results from the Oral Frailty 5-Item Checklist. Geriatr Gerontol Int. 2024 Feb 23.