令和6年度は第9期介護保険事業計画がスタートしました。多くの自治体の計画において「地域共生社会の実現に向けて」というゴールが記載されています。厚生労働省によると、地域共生社会とは制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を指しています。
現在、一般介護予防事業に参加する高齢者の多くは、いわゆる、元気高齢者です。しかし、家庭の内外で、健康・介護をはじめ様々な問題を抱えている人は少なくありません。また、現時点では元気に通いの場に参加しているかもしれませんが、いずれは、こうした様々な問題のために参加が困難になるものです。そのような人たちに総合事業や介護サービスの「場」は用意されているものの、本人の趣向や環境は様々ですので、誰しも、流れ作業のようにスムーズに移行できるものではありません。それならば、最初から元気な高齢者でもフレイルな高齢者でも参加できるような場があれば良いのではないでしょうか。このような個人の持続性に加えて、受け皿となる通いの場など社会参加団体・グループの持続性も重要な課題です。
当研究所のこれまでの調査において、多様な世代の人々がメンバーとして参加する活動ほど、長く継続していることがわかりました。多様な世代の人々が参加できる活動とはどのようなプログラムや工夫があるのか、私たちは引続き、全国の好事例をもとにその要件を紹介したいと思います。
一方、どのような団体・グループでもリーダーや主たる担い手となる人の負担は小さくありません。次の担い手へと、うまく、バトンタッチできるという点でも若い世代がメンバーに居ることは重要です。
多様な参加者、多様な担い手に支持される多様なプログラムとは、一見、難題のように思われるかもしれませんが、実は、我々が気づいていないだけで、身近な地域に埋もれていることが少なくありません。こうした地域の資源を掘り起こすことが地域共生社会づくりの第一歩ではないでしょうか。
そこで、今年度は自治体の皆様への研修や相談事業等に加えて、団体・グループのリーダーや担い手についての大規模な調査を実施する予定です。それにより、皆様に通いの場など団体・グループの新たな支援方策について情報提供したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
令和6年5月
東京都健康長寿医療センター研究所副所長
東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター長 藤原 佳典