センター長挨拶

 昨年8月5日に厚生労働省老健局より令和6年度地域支援事業実施要綱等の改正点が通知されました。 実施要綱の改正内容について具体的なイメージができるよう、厚労省は事業例について、「介護予防・日常生活支援総合事業(以降、 総合事業)のガイドラインについて」の一部を改正しています。

 ここで総合事業の充実を通じ、高齢者が元気なうちから地域社会や医療・介護専門職とつながり、そのつながりのもとで社会活動を続け、介護が必要となっても必要な支援を受けながら、住民一人ひとりが自分らしく暮らし続けられる「地域共生社会」の実現を目指していくと記されています (https://www.mhlw. go.jp/content/001284411.pdf)。

 私たち、東京都介護予防・フレイル予防推進支援センターは昨年度までは主に元気高齢者を対象とする一般介護予防事業としての通いの場の立ち上げに主眼をおいた研修や伴走支援を行ってきました。しかし、上述のように元気なうちから、要介護状態になっても高齢者をシームレスに支援することが求められています。それ故、令和7年度からは一般介護予防事業に加えて、総合事業にかかる事業を導入することになりました。そもそも、フレイルになると、単に健康問題だけではなく、生活の不便さも増悪します。従って、一人の高齢者をライフコースに沿ってみてみると一般介護予防事業に加えて、総合事業も一体的にカバーすることは理にかなっています。

 しかし、カバーする地域包括支援センターなど、福祉保健職の立場からすると、概ね体制が整備された体操中心のタイプ III 注) の通いの場だけではなく、タイプ I、 II の多様な通いの場の活用が益々、求められるようになります。今回の生活支援体制整備事業における 「住民参画・官民連携推進事業」は通いの場事業にとっても大きな変曲点となります。地縁団体や高齢ボランティアのみに依拠する地域づくりには限界があることは多くの職員が実感されていることと思います。官民連携とは、全国一、様々な企業が集中する東京のためにある事業と言えます。

 さて、ものごとが成功する秘訣として、 古来 「天」「地」「人」 すなわち「天の時、地の利、人の和」が揃うことと、中国の儒学者・孟子が説いています。天の時とは時世です。今日、優良な企業は SDGsやESGのもと、持続可能な社会に貢献することが株主に強く求められています。SDGsの17項目のうち半数以上は健康、福祉、教育、貧困、まちづくりといった地域コミュニティの持続にかかわる項目です。こうした社会課題を解決するために企業自らが地域連携を模索しています。

 当センターにも大小様々な企業の方が地域連携について相談に見えます。そのアイデアやセンスの多くは斬新で実践的です。企業連携により閉塞したコミュニティの課題をブレークスルーし地域支援事業に活かす「天」=時世がやってきました。私たちも企業連携についての好事例やノウハウを発信していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
                        

令和7年5月
東京都健康長寿医療センター研究所副所長
東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター長 藤原 佳典

注)https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/yowattemoanshin-ikiiki-machizukuri/fureiru-ninchisho-sanka-kayoinoba.html(2025 年 4 月 25 日アクセス)