AI画像解析研究

メンバー

リーダー 専門部長 亀山 征史 

主な研究

1. 顔による認知症スクリーニング方法の推進
2. MRI画像のAI解析(松尾研究室との共同研究)
3. 核医学動態解析の研究
4. AIを用いたデータの可視化
5. 理論医学の推進

研究紹介

1.顔による認知症スクリーニング方法の推進

東京大学医学部老年病科と共同で、顔写真から、認知機能低下を見分けるAIの研究をしてきている。まず、見た目年齢が認知機能と暦年齢よりも強く相関することを示し、認知機能低下が顔に表れることを示した。このことから、顔に表れるのであれば、AIが判別できるのではないかと考え2021年には予備的な結果を論文にし、新聞などでも取り上げられ、話題となった。信頼度を高めるためにはもっと数多くの顔写真が必要であり、改めて顔写真の収集を始めることになった。また、笑顔の方がよりよく判別することができることもわかってきている。現時点では、警察庁・警視庁の協力を得て、運転免許試験場にて1000人以上の高齢者の顔写真を収集した。また、当センターにおいても、少しずつ顔写真の収集を始めている。

2.MRI画像のAI解析

2020年度より、認知症未来社会創造センターの事業として、東京大学工学部松尾研究室との共同研究を行っている。現在、微小出血の検出および虚血性白質病変の分類を行うAIの作成を行っている。

3.核医学動態解析の研究

核医学画像から、求めたいものを抽出する作業が核医学動態画像解析である。例えば、脳血流SPECT tracerは血管から脳組織に移行するときに、高血流になるほど移行しにくくなるRenkin-Croneの式があり、また、tracerによっては脳組織にとどまる割合も高血流の方が低くなる。このため、高血流の領域が過小評価されているのを補正して正しい血流分布にするという作業が必要になる。今までのLassenの補正が脳組織にとどまるところだけを補正していたが、血管から脳組織に入るところも補正できるようにした。
また、アミロイドPETは、アミロイドの蓄積量を推定するのに、ダイナミック撮像をしてBPNDを算出するが、ダイナミック撮像は撮像時間が長くなるため、小脳皮質を参照領域とするSUVRが多く使われている。SUVRは平衡状態では、BPND +1と同等になるはずではあるが、通常平衡状態には到達しなく、また、脳血流などの影響も受けるため、BPNDと比較して安定性が悪い。白質を参照領域とすると経時的な安定性がよいと言う話もあり、その根拠をシミュレーションしたところ、小脳皮質のノイズが大きいことに起因することを突きとめた。

このように、動態解析は、核医学画像から意味のある値を抽出するのに必須なものであり、新しい薬剤ができたときに、その薬剤の動態を見極め、簡便な撮像方法はどのくらいの時間にどこを参照領域とすべきかを示すためにも必要である。PET画像診断研究テーマ、PET薬剤科学研究テーマと協力をして、新規薬剤の解析などを行っていく。

また、脳血流SPECT製剤IMPのプラナーダイナミック撮像から、脳血流定量する方法(REICA)を考案した。REICA法の今後の普及に向けて、他施設共同研究などを行っていく。

4.AIを用いたデータの可視化

人工知能(AI)は、特徴をコンピューターが抽出する機械学習が主であるが、機械学習は教師あり学習と教師なし学習の2つに分けられる。教師あり学習には、最も注目されているdeep learningがあり、私たちもdeep learningに力を入れてきた。他にも決定木、support vector machineなどがある。

教師なし学習は、正解を与えない機械学習の手法であり、次元削減をして、多次元の複雑なデータをわかりやすく可視化することなどができる。主成分分析、t-SNEUMAPなどの技術がある。

他のチームと協力をし、様々なAIを駆使して大規模なデータを可視化していく。

5.理論医学の推進

医学において、算数はあまり用いられてこなかったが、自然科学の1分野である医学においても、共通言語である算数は役立つ。

核医学画像解析の分野以外においては、平均血糖と平均赤血球年齢とHbA1cの関係式を導き、HbA1cと平均血糖から平均赤血球年齢を求める方法を考案した。今まで赤血球寿命を測定する方法は51Crを用いる方法があったものの、とても煩雑なうえ、すでに51Crの供給が途絶えてしまっている。赤血球クレアチンから平均赤血球年齢を求める方法もモデルを作成して考案した。この2つの方法からヘモグロビンの糖化定数も求められ、平均赤血球年齢の絶対値も求められることになった。平均赤血球年齢を測定できれば、貧血の鑑別診断や溶血性貧血の重症度判定、治療の効果判定に役立つと考えられる。共同研究を計画している。

脳灌流圧は、脳血流量(CBF)や脳血液量(CBV)、脳酸素代謝(CMRO2)などを決める重要な要素であるが、直接測定することはできない。従来、CBF/CBVが脳灌流圧を推定するのによいのではないかと提唱されてきたが、流体力学をもとにして、CBF/CBV2のほうがよりよい指標になるのではと提唱した。元にしているモデルがポアズイユの法則が成り立つ分岐のない細長い血管であるため、現実にはどのくらい成り立つのか、もっと精細なモデルを作って解析が必要と思い、共同研究を始めている。

その他(参考資料等)

  1. Matsubara T, Kameyama M, Tanaka N, Sengoku R, Orita M, Furuta K, Iwata A, Arai T, Maruyama H, Saito Y, Murayama S. Autopsy Validation of the Diagnostic Accuracy of 123I-Metaiodobenzylguanidine Myocardial Scintigraphy for Lewy Body Disease. Neurology. 2022;98(16):e1648-e1659.
  2. Kameyama M, Momose T, Ishibashi K, Ishii K. A Novel Proposal for an Index for Regional Cerebral Perfusion Pressure - A Theoretical Approach Using Fluid Dynamics. Front Neurol. 2022;12:765463.
  3. Umeda-Kameyama Y, Kameyama M, Tanaka T, Son BK, Kojima T, Fukasawa M, Iizuka T, Ogawa S, Iijima K, Akishita M. Screening of Alzheimer's disease by facial complexion using artificial intelligence. Aging (Albany NY). 2021;13(2):1765-1772.
  4. Kameyama M, Okumiya T, Tokuhiro S, Matsumura Y, Matsui H, Ono Y, Iwasaka T, Hiratani K, Koga M. Estimation of the hemoglobin glycation rate constant. Sci Rep. 2021;11(1):986.
  5. Iwabuchi Y, Kameyama M, Matsusaka Y, Narimatsu H, Hashimoto M, Seki M, Ito D, Tabuchi H, Yamada Y, Jinzaki M. A diagnostic strategy for Parkinsonian syndromes using quantitative indices of DAT SPECT and MIBG scintigraphy: an investigation using the classification and regression tree analysis. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2021;48(6):1833-1841.
  6. Kameyama M, Ishibashi K, Toyohara J, Wagatsuma K, Umeda-Kameyama Y, Shimoji K, Kanemaru K, Murayama S, Ogawa S, Tokumaru AM, Ishii K. Voxel-based morphometry focusing on medial temporal lobe structures has a limited capability to detect amyloid β, an Alzheimer's disease pathology. Aging (Albany NY). 2020;12(19):19701-19710.
  7. Maruko M, Kameyama M, Sakai J, Shirasaki S, Fujiwara H. The REICA method for quantification of cerebral blood flow is less affected by lung washout of [123I] IMP than the graph-plot method. Ann Nucl Med. 2020;34(10):757-761.
  8. Umeda-Kameyama Y, Kameyama M, Kojima T, Ishii M, Kidana K, Yakabe M, Ishii S, Urano T, Ogawa S, Akishita M. Cognitive function has a stronger correlation with perceived age than with chronological age. Geriatr Gerontol Int. 2020;20(8):779-784.
  9. Kameyama M, Koga M, Okumiya T. A novel method for calculating mean erythrocyte age using erythrocyte creatine. Aging (Albany NY). 2020;12(9):8702-8709.
  10. Iizuka T, Kameyama M. Spatial metabolic profiles to discriminate dementia with Lewy bodies from Alzheimer disease. J Neurol. 2020;267(7):1960-1969.
  11. Kameyama M, Ishibash K, Wagatsuma K, Toyohara J, Ishii K. A pitfall of white matter reference regions used in [18F] florbetapir PET: a consideration of kinetics. Ann Nucl Med. 2019;33(11):848-854.
  12. Iizuka T, Fukasawa M, Kameyama M. Deep-learning-based imaging-classification identified cingulate island sign in dementia with Lewy bodies. Sci Rep. 2019;9(1):8944.
  13. Kameyama M, Watanabe K. A new non-invasive graphical method for quantification of cerebral blood flow with [123I] IMP. Ann Nucl Med. 2018;32(9):620-626.
  14. Kameyama M, Takeuchi S, Ishii S. Steady-state relationship between average glucose, HbA1c and RBC lifespan. J Theor Biol. 2018;447:111-117.
  15. Kameyama M. Lassen's equation is a good approximation of permeability-surface model: new α values for 99mTc-HMPAO and 99mTc-ECD. J Cereb Blood Flow Metab. 2014;34(7):1157-61.
  16. 亀山 征史, 亀山 祐美 【認知症のバイオマーカーはどこに向かうのか】AIを用いたアルツハイマー病新規診断技術の可能性と今後の展望 老年精神医学雑誌 33(7) 672-678 2022年7月
  17. Kameyama M, Murakami K, Jinzaki M. Comparison of [15O] H2O Positron Emission Tomography and Functional Magnetic Resonance Imaging in Activation Studies. World J Nucl Med. 2016;15(1):3-6.