当院リハビリテーション科では『ボツリヌス外来』にてボツリヌス療法を行っています。対象は主に脳血管障害後遺症や成人脳性麻痺の痙縮、痙性斜頚です。
脳卒中の後遺症のひとつに手足のつっぱり(痙縮;けいしゅく)があります。痙縮とは、筋肉が緊張しすぎて、かたく動かしにくくなったり、勝手に望まない方向に動いてしまう状態のことです。麻痺になった側の手足に起こりやすく、次のような症状がよく見られます。
ボツリヌス療法の他に、内服薬、フェノールブロック療法、外科的療法、バクロフェン髄注療法、脳深部刺激療法などがあります。
脳性麻痺とは母親のおなかの中にいる時から生後4週までの間に何らかの原因で脳に損傷を受けたことで起こる運動・姿勢の障害です。痙直型、アテトーゼ型、失調型、混合型などのタイプに分けられます。痙直型では筋肉の緊張が高くなりすぎて手足が動かしにくくなり、アテトーゼ型では手足や体が勝手に動いてしまうという症状が特徴的です。このため体を動かしにくくなったり、楽な姿勢を取りづらかったりし、体や手足に負担がかかり痛みが出たりします。脳病変そのものを治すことはできませんが、痙縮を抑えることで、動きやすくしたり、姿勢をよくしたり、関節変形を防いだりするための治療は可能です。
痙性斜頚は、首の周囲の筋肉が自分の意思に関係なく収縮し、頭、首、肩などが不自然な姿勢になったり、強い痛みが出たりする病気です。なぜ起こるのかはまだはっきりとはわかっていませんが、姿勢を維持するプログラムに何らかの異常が起こると考えられています。遺伝、薬物、脳性麻痺などの病気などが原因の場合もありますが、多くははっきりした原因がなく発症します。またストレスや疲労などが影響するといわれています。日本では女性に多く、30から40歳代が多いといわれています。痛みや姿勢の異常などで日常生活に支障がある場合に治療を考えます。
ボツリヌス療法では、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質「ボツリヌス毒素」を有効成分とする薬を使います。薬を筋肉に注射することで、筋肉につながる神経の働きを抑えて筋肉の緊張をやわらげることができます。
脳卒中後の手足のつっぱり(痙縮)をはじめ、脳性麻痺の痙縮、痙性斜頚の方に、この薬を注射することで、次のようなことが期待できます。
ボツリヌス療法によって筋肉の緊張がやわらいでも、効果を得るためにはリハビリテーションが必要です。ボツリヌス療法とリハビリテーションを合わせて行うことをお勧めします。
注射の効果は通常3-4ヵ月ぐらいで切れてきます。再び効果を得るためには、繰り返し注射することになります。ただし効果が続く期間には個人差があるので、医師と相談しながら次の計画を立てていきます。
数ヶ月で薬が切れるメリットもあります。効果が強すぎたり弱すぎたりした場合に、次の治療の時に評価しながら、より効果的な投与量や投与部位を検討し直すことができます。
ボツリヌス外来 火曜日午後
お問い合わせ 03-3964-1141
(病院窓口→リハビリテーション科受付を呼出)
常勤医
しょうだ なおこ
資格 | リハビリテーション科専門医 日本整形外科学会専門医 義肢装具等適合判定医 日本リハビリテーション医学会指導医 |
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