ボツリヌス療法とは、薬を筋肉に注射することで、筋肉につながる神経の働きを抑え、自分の意思とは関係なく勝手に筋肉が収縮してしまうのを和らげる治療です。
治療にはボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質「ボツリヌス毒素」を有効成分とする薬を使います。
脳卒中後の手足のつっぱり(痙縮)をはじめ、脳性麻痺の痙縮、痙性斜頚などに、この薬を注射することで、次のようなことが期待できます。
注射の効果は通常3-4ヵ月ぐらいで切れてきます。効果を維持するためには、繰り返し注射する必要があります。効果が続く期間には個人差があるので、医師と相談しながら次の計画を立てていきます。
治療には公的医療保険が適用されます。身体者障害者手帳、高額療養費制度、重度障害者医療費助成制度などが使える場合があります。詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。
注射自体はあくまでも筋肉の緊張を和らげる効果しかありません。麻痺が治る治療ではありません。効果を得るためには自主訓練を含むリハビリテーションが必要です。当科では原則外来リハビリテーションは行っていませんが、必要に応じて介護保険のリハビリテーションスタッフなどと連携を取るようにしています。
上肢痙縮・下肢痙縮(手足のつっぱり)
痙性斜頸
脳性麻痺(成人のみ)
●上肢痙縮・下肢痙縮(手足のつっぱり)
脳卒中や頚髄損傷などの後遺症の一つに手足のつっぱり(痙縮;けいしゅく)があります。痙縮とは、筋肉が緊張しすぎて、かたく動かしにくくなったり、勝手に望まない方向に動いてしまう状態のことです。麻痺になった側の手足に起こりやすく、次のような症状がよく見られます。
●痙性斜頸
痙性斜頚は、首の周囲の筋肉が自分の意思に関係なく収縮し、頭、首、肩などが不自然な姿勢になったり、強い痛みが出たりする病気です。なぜ起こるのかはまだはっきりとはわかっていませんが、姿勢を維持するプログラムに何らかの異常が起こると考えられています。遺伝、薬物、脳性麻痺などの病気が原因の場合もありますが、多くははっきりした原因がわかりません。またストレスや疲労などが影響するといわれています。日本では男性に多く、30から40歳代が多いといわれています。痛みや姿勢の異常などで日常生活に支障がある場合に治療を考えます。
●脳性麻痺(成人のみ)
脳性麻痺とは母親のおなかの中にいる時から生後4週までの間に何らかの原因で脳に損傷を受けたことで起こる運動・姿勢の障害です。痙直型、アテトーゼ型、失調型、混合型などのタイプに分けられます。痙直型では筋肉の緊張が高くなりすぎて手足が動かしにくくなり、アテトーゼ型では手足や体が勝手に動いてしまうという症状が特徴的です。このため体を動かしにくくなったり、楽な姿勢を取りづらかったりし、体や手足に負担がかかり痛みでたりします。脳病変そのものを治すことはできませんが、痙縮を抑えることで、動きやすくなったり、姿勢をよくしたり、関節変形を防いだりするための治療は可能です。
ただし、治療により筋力低下が起こったり、体のバランスが変わったりしてしまうことがあります。痙縮をうまく利用して歩いている方や筋力がない方では、効果が期待できない場合があります。効果が期待できるかどうかは診察時に評価を行いますので、まずはお問い合わせください。
ボツリヌス外来 初診:木曜9:30 治療:火曜午後
常勤医
しょうだ なおこ
資格 | リハビリテーション科専門医・指導医 日本整形外科学会専門医 義肢装具等適合判定医 |
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