当院に新たに次世代2層検出器が搭載された「IQon Spectral CT(Philips Japan)」が導入しました。
従来のCT装置は、一般的に管電圧120kVが最大エネルギーとなる連続X線が人体を透過した量を計測することで、画像を作成していました。これに対して、Dual Energy CT装置では、例えば80kVと140kVといった異なる2種類の連続X線を用いて撮影し、それぞれから得られたデータを用いてスペクトル解析を行うことで、様々な画像を得ることが可能です。今回当院に導入したDual Energy CT装置は、検出器により2種類のエネルギーのスペクトル解析を行います。これは、従来は1層であった検出器が2層構造となったことにより、120kVの連続X線から低いエネルギーと高いエネルギーの情報を取得することが可能となりました。つまり2種類の連続X線を用いて撮影を行わないため、被ばくの増加もありません。また、撮影方法も従来と変わらず、常にDual Energyのデータを得ることが出来ます。
Dual Energy CTでは、様々な画像(スペクトラル解析画像)を得ることができます。例えば、仮想単色X線画像は、40keVや130keVといった従来では撮影不可能なエネルギーの画像を得ることができます。この画像では、コントラストの改善やアーチファクトの低減が図れます。また、造影CT検査で使用するヨード造影剤を強調したヨード密度強調画像は、臓器のわずかな血流量変化を強調してみることができます。この他、実効原子番号画像など従来のCT装置では作成することができない画像を得ることができます。
図1:2層検出器の模式図
1.従来得ていた画像とスペクトラル画像を1度の検査で同時に取得することができます。
⇒従来得ていた画像も得ることができますので、過去にCT検査を行った画像と比較することができます。また、被ばくの増加はありません。
図2:肺動脈塞栓症の症例
2.造影剤を用いた検査では、造影効果を変化させることができます。
⇒従来と同等の造影剤量を投与する場合には、低いエネルギーの画像(仮想単色X線画像)を作成することで、従来よりも造影効果の高い鮮明な画像を取得することが可能となります。
図3:造影効果の比較(左;従来の画像、右;仮想単色X線画像_40keVの画像)
⇒腎機能が低下している場合などでは、低いエネルギーの画像(仮想単色X線画像)を作成することで、従来と同等の造影効果となる画像を作成することが可能となります。
図4: 過去画像との比較(左;過去画像、中・右;造影剤を60%減量した画像)
図5: 造影剤を40%減量し検査施行した症例_3D-CT画像における比較
(左;従来の画像で作成、その他;仮想単色X線画像_60/50/40keVを用いて作成)
⇒造影画像から造影剤の情報を除去することにより、仮想的に単純の画像を作成することが可能となります。
図6: 仮想単純画像(左;従来の画像、右;仮想単純画像)
3.金属アーチファクトの低減が可能となります。
⇒人工関節などの金属が体内にあった場合、従来では金属の影響によるアーチファクトで画像が観察しづらくなることがありましたが、金属アーチファクトの影響が低減できます。
図7: 金属アーチファクト低減の比較(左;従来の画像、右;金属アーチファクト低減画像)