第34話 もの忘れを予防するには(その12)

もの忘れを予防するには(その12)

サプリメントに頼る
 習慣的に運動を続けるには、根気が入ります。また仲間がいないと続ける意欲も減る方もいるでしょう。
 予防に有効なバランスの良い食事は、自炊が出来なくなった方やしばしば弁当、店屋物に頼らなくてはいけない方には難しいことでしょう。そんな時、「朝夕一粒だけで」といったキャッチフレーズは魅力的に響きます。私の外来でも、かなりの方が初診時にサプリに投資しています。
 
 効果を見る方法には、
1)飲む前後で認知機能を比べる(単純前後比較試験)
2)飲まない人と前後の認知機能比べる(コントロールを置いた比較試験)
3)飲む飲まないをランダムに決める(ランダム化コントロール試験:RCTと言います)
4)いくつかの RCTの結果をまとめて、全体の成績から効果を判定する(メタアナリシスと言います)

 主だったサプリのメタアナリシスを示します。
 ビタミンB, E,ミネラル MCIの進展予防に無効
 (Jenny McCeery, Cochrane Database Syst Rev 2018)
 ビタミンD アルツハイマー患者で認知機能改善の効果はない
 (Yage Du, Am J Ther 2020)
 オメガ脂肪酸 アルツハイマー患者で認知機能改善の効果はない
 (Araya-Q F, Neurologia 2020)
 プロバイオティクス(善玉菌)アルツハイマー患者やMCI*で認知機能改善
 (Den H, Aging Albany 2020)抗炎症作用か?
 セレニウム(抗酸化剤)アルツハイマー患者やMCI*で認知機能改善
 (Meire E Pereira Nutrients 2022)
 メラトニン(睡眠リズム改善)アルツハイマー患者で認知機能改善
 (Ping-Tao Tseng, Curr Neuropharmacol 2022)
 降圧剤(薬剤種類によらず)アルツハイマーのリスクを12%低減
 (Jie Ding, Lancet Neurol 2020)
 銀杏葉エキス 初期アルツハイマーに効果
 (Liming Xie, Cells 2022)

 効果はその方の慢性の病気や睡眠などの状態によって変わりますので、専門医に相談してから服用することをお勧めします。
 国際アルツハイマー協会は、2019年に単一のサプリは効果がないと宣言し、まだこれは変わっていません。