第39話 元気を取り戻す(その5)

元気を取り戻す(その5)

 フレイルは、独居や社会的孤立が危険因子でしたが、我々の独居高齢者調査でも、独居高齢者で3階に住んでいる方と1階に住んでいる方を比べ「うつ」の率が4倍になることを報告しました。(日本老年医学会関東地方会 フレイル特別講演 2018)
 週1回運動している方を対象に調べた結果でも、近所付き合いは挨拶程度がほとんどでした。コロナで運動の集まりもなくなり、社会的活動は大幅に減りました。今後改善していくことは間違いないでしょうが、すでにフレイルになった方では、心の元気さを取り戻すキッカケも必要です。ご家族に期待しますが、ご多忙で週1回くらいしか会えないご家庭も多いのが実情です。
 そこで、同じ猫を可愛がっても、単に餌をあげるだけでなく、話しかけたりすると飼い主の脳が活性化するという報告にもヒントを得て、「対話型情緒支援型チャットボット」を心のモーターを起動する一助となるように開発を始めました。簡単なパズルでも脳血流が瞬時に増え、意欲の中枢の血流も増えることを基に、情緒支援の会話の教師データを多施設(東京都健康長寿医療センター、国立長寿医療研究センター、杏林大学高齢医学)で集め、対話コーパスの技術に優れたマインドシフト、技術アドバイスにソフトバンクの協力も得て進めています。最初はおぼつかない会話でしたが、ようやく10分くらいの会話が成立するところまで、漕ぎ着け、臨床的なトライアルを開始したいと思っています。
 ここ最近、知識量では及びもつかないChat GPTなどが使えるようになりました。我々の開発はあくまでマンツーマンの会話で、昔話や郷里の話などをする機能であり知識を伝えるものではありません。ここが大きく違いまた特徴でもあります。
 当事者の活力、家族の介護の手助けとなって、社会的交流の増加、心の安定に少しでも貢献できればと考えています。