第52話 断片化(その1)

断片化(その1)
「自分とは何か?」

 子供から、成長するにつれ、家族や先生、書籍、ラジオ(古いが)やテレビから、多くの情報とともに、考え方や生きる意味を学び考えるようになる。その過程で、自分とは何か、生とは何か、死とは何かに思いをはせ、自己実現への迷い道が始まる。なんでもできる、どの方向へも進める、誘惑のピースはほぼ無限にある。心は断片化し一枚のあるいは一つの石のようになかなか収束しない。この時期を「青春」と呼ぶ人もいるようだ。無防備に拡散した興味は、多くの友を求め、不幸にも悪質な誘惑に負ける場合もある。多くの大人は、自分の子供でなくても、防御的に地域で接していた記憶がある。逆に、近年のホワイト案件などは、そこに付け込んだ巧妙かつ悪質な「わな」である。

 一つのピースをとりあえず選び、社会人となり、人生の半ばに近づくにつれ、天職と呼べる幸運な人以外でも、自分のピースが周りの断片と少しずつ重なっていくことがわかるであろう。老いを重ね、違いと共通点が紙一重であることに気づいた時、一枚の皿に融合した断片を懐かしく思う日が来る。

 翻って、医療福祉の現状はどうであろうか。次回から述べたい。