生活指導の基本
○ポイント
新オレンジプランの精神に基づき、
#当事者の参加、視点の重視
#家族の介護負担への配慮
#予防、MCI、軽度、中等度、高度、重大な身体合併症の可能性、エンドオブライフまで、適時適切な生活指導を行う
生活指導を始める前に
本人は不安と来たくなかったといった不満、家族は朝から晩までの困りごとを抱えて来院する。 診断名と処方でおしまいではなんの解決にもならない。
全ての指導を行うには2時間以上かかることがあり、初診では最も困っている2、3のことを指導し、2回目、3回目と少しずつ積み残しの指導をする。
本人への生活指導
#認知症予防やMCI(軽度認知障害)で来院した場合
予防の要点を話し、集団の教室で引き継いで指導するのが効率的である。
フラミンガム研究や米国の研究、WHOの認知症の危険因子である、中年期の高血圧、肥満、生涯を通じての糖尿病、喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、偏った食事、うつ、運動不足、知的刺激不足について、本人家族の生活ぶりと持病を聞いて指導を行う。画像検査でも微小脳梗塞や白質病変の存在があれば、指導はより厳密に行い、血液検査や血圧をフォローする。ただし、20%くらいはフレイルが存在しており、血糖、血圧管理は緩やかにすることが肝要である。生活指導のみで投薬が不要となるケースが多い。また、心理検査などで興奮している場合の血圧は高めで信頼できないので、家庭血圧がわかれば一番であるが、後日別室で自己測定してもらうのが正確である。
昼寝に関して、15分以内は記銘力にいいという成績があるが、30以上の昼寝は夜間の熟睡を妨げ、リスクになる。食事に関しては、食品多様性が少ないのはリスクになるため、偏りのない食生活が進められる。 地中海食の臨床研究が欧州で行われているが、和食に乳製品を加えれば問題ない。
知的刺激や運動不足は、サークルや自治体のサービスをMSWに紹介してもらう。介護予防サロンや予防教室などあれば利用を勧める。友人との会合に参加してもらうよう、家族から親しかった友人に連絡してもらうことも効果的である。
#認知症と診断されるレベルの場合
「1番の困りごと」を聞くが、「何も困っていないという」返事も多い。この場合、昔と比べてどうですか?と聞くと「多少はね、歳だから」という返事があることも少なくない。これをきっかけに、不便になったことを補強するお薬カレンダー、トイレの場所の明示、風呂や鍵の音声表示なども利用できる。
近くのコンビニに、家族が言って、同じものを買うのを優しく諭すように伝えるか、当日に返品に来る旨伝えておく。
風呂嫌いになることも多いが、強制はしない。好きな歌などあれば、風呂でだけ聞けるようにするのも一法。
家族の介護力がある程度あり、進行を相談される場合は、無理のない範囲で、アルバムなど昔の材料を使って話を聞いたり、古い歌を歌ったり、散歩で近所の昔のことを話したり、親戚の消息を話したりする。
同じ話を何度も繰り返すのが家族の負担になっているが、そのことは本人が気にしている要点でもある。話を発展させたり、話題転換したりすると家族の気苦労も和らぎ、本人も納得する。
生活リズムの乱れ、特に昼夜逆転で、夜中に起きて昼間寝てばかりいるのは、家族の生活リズム、食事の準備、片付けなど大きな負担になる。
夕食後すぐ寝て、午前1時に起きてゴソゴソするのは不眠ではない。早く寝てしまうのはすることがないからである。夕食時間は早くても19時、入浴は20時位にすること。夏ならば、夕食後の散歩も効果的である。
中等度以上の場合は次回。